JOURNEY

Handcrafted Knits from Nepal’s Ancient City

― ネパールの古都で編まれるニット ―


今回はネパール出張の際に訪れた、ハンドニットが生まれる場所について記したいと思う。

ネパールで作られるハンドニットは、私たちのモノづくりにとって欠かすことのできないアイテムの一つだ。だからこそ、時間を作っては現地を訪れ、実際の生産の様子を見るようにしている。

今回訪れたのは、ヒマラヤ山脈の麓にある古都バクタプール。
世界遺産の建造物が数多く残る、小さくて美しい街だ。
カトマンズから車で向かい、街に入ると景色が少しずつ変わっていく。
古いレンガ造りの建物、石畳の道、そしてどこかゆったりと流れる時間。観光地として有名な場所でもあるが、少し路地に入ると、そこには今も昔ながらの生活が残っている。


この街で、私たちのハンドニットは作られている。
一枚のニットが形になるまでには、糸を紡ぎ、色を染め、そして一目一目編み上げていく、いくつもの手仕事が重ねられている。
その始まりにあるのが、原毛から糸を作る工程だ。

最初は大きな塊となっている原毛をほぐし、繊維を一つひとつ開いていく。異なる原毛を混ぜ合わせながら、繊維の状態を整え、糸にするための準備が始まる。

ほぐされた原毛は機械に送られ、さらに細かく開かれていく。絡み合っていた繊維が少しずつ整えられ、ふんわりとした繊維の束へと変わっていく。

そこから繊維を引き伸ばし、細く均一な状態へ。

そして最後に撚りを加えることで、バラバラだった繊維がしっかりと結びつき、一本の糸になっていく。

糸になる前の原毛を機械で整える工程

編みの工程へ進む、整えられた糸


その変化を実際に工場で見ていると、普段何気なく触れている「糸」が、決して最初から糸の姿をしていたわけではないことに気づく。

ふわふわとした原毛が、機械を通り、少しずつ形を変えながら、ようやく一本の糸になる。
そこには機械の力だけではなく、原毛の状態を見極め、機械を調整する人の経験や技術も欠かせない。

一見すると無機質な工場の中で、原毛が糸へと姿を変えていく。

その一つひとつの工程を知ることで、完成した製品を見る目も少し変わってくる。
一本の糸にも、そこに至るまでの時間と、人の手がある。

そうして生まれた糸は、次の工程でニットへと姿を変えていく。

作業場を訪れると、女性たちが円を囲むように座り、棒針を手に編み物をしていた。
向かい合いながら、時折笑い声をあげ、談笑しながらも手は動き続けている。

その光景を見ていると、なんだかこちらまで温かい気持ちになる。

急ぐ様子はなく、それでも手は止まらない。
ゆっくりとした時間の中で、ニットが少しずつ形になっていく。


工場の機械が作るスピードとはまったく違う時間の流れ。

その時間こそが、このニットの風合いや温もりを作っているのだと思う。

ネパールの小さな街で、人の手によって丁寧に編まれるニット。

その一枚一枚には、作り手たちの日常と時間が編み込まれている。だからこそ、この場所で生まれるニットには、特別な温もりがあるのだと思う。

今回の訪問を通して感じたのは、ものづくりの背景にある、そこに暮らす人々の営みや、この土地が長い時間をかけて受け継いできた文化の大切さだった。

そうした日々の暮らしの中で受け継がれる手仕事があるからこそ、この街で生まれるニットには、作り手たちの想いと人の温もりが宿るのだと思う。


2026年8月26日、ネパールでは大規模な洪水が発生しました。
この災害では、多くの方々が被害に遭われ、現在も捜索や復旧活動が続いています。
今回訪れたバクタプールをはじめ、ネパールの各地で暮らす人々が、一日も早く穏やかな日常を取り戻されることを願っています。

このたびの災害により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
また、お亡くなりになられた方々と、ご遺族の皆さまに、心より哀悼の意を表します。

BACK