JOURNEY

A Piece of Cloth, Woven into India’s History

~自由を紡いだ、一枚の布~

ジャイプールでカディのものづくりに触れ、その背景にある歴史や人々の営みを知るほどに、もっとそのルーツを辿ってみたいと思うようになった。
そこで今回、私たちはコルカタへ向かった。

デリーから飛行機でおよそ2時間30分。空港からさらに車で30分ほど走ると、市街地へと到着する。

インド東部に位置するコルカタは、かつてイギリス統治時代にインドの首都として栄えた街。
古い洋館や路面電車が今も街に残り、インドのなかでも独特の空気を持っている。

VICTORIA MEMORIAL
イギリス統治時代の面影を残す、コルカタを象徴する建築。

古い洋館が立ち並ぶ、歴史を感じさせるコルカタの街並み。

街を走る黄色いタクシーも、その象徴的な風景のひとつだ。
慌ただしく行き交う街のなかでも、どこかゆったりとした時間を感じさせる存在だった。

長年、コルカタの日常を支えてきたこの黄色いタクシーも、近年は政府による環境規制などの影響で、少しずつ姿を消しつつあるという。

丸みを帯びたクラシックな車体

かつて当たり前だった風景が、時代の流れとともに変わっていく。
その姿に、どこかカディの存在も重なった。

効率やスピードが求められる時代のなかで、手紡ぎ・手織りという昔ながらの方法を守り続けること。
そこには単なる生産ではなく、人の営みや文化を繋いでいく意味があるのだと思う。

コルカタは、インドの文化や思想、芸術が色濃く息づく街としても知られている。
そしてこの土地は、インド独立運動とも深い関わりを持ってきた。

ガンジーが掲げた『自国のものを使い、自らの手で生産する』という思想。
その考えはインド各地へ広がり、カディという存在を単なる布ではなく、人々の自立や誇りを象徴するものへと変えていった。

今でもこの地域だけで、おおよそ60万世帯もの人々が手織りに関わる仕事をしているという。
一枚の布の背景には、長い歴史だけではなく、今を生きる多くの人々の暮らしがある。

今回の旅では、実際に手織りの現場や染めの工房も訪れた。

織り機の前に座る職人たちは、静かなリズムで糸を重ねていく。
足でペダルを踏み、手で糸を操りながら、少しずつ布が織り上がっていく光景には、機械にはないあたたかさがあった。

100mのカディを織り上げるまでには、およそ6か月を要するという。

機織りに使う経糸を、一本ずつ整えていく。

足でペダルを踏み、手で糸を操りながら、一枚の布を織り上げていく。

染めの現場では、小さな染料桶に布を浸し、何度も手作業で色を重ねていく。
気温や湿度、その日の環境によっても色の出方が変わるため、そこには長年の経験と感覚が必要になるという。

『均一ではない糸。』
手作業だからこそ生まれる、わずかな揺らぎ。
その不均一さが、布に豊かな表情を与えていた。

それは、どこか手作りのパンにも似ている。
工場でつくられるパンは、形も大きさも均一で、いつ食べても同じ味を楽しむことができる。
一方で、手作りのパンは少し形がいびつだったり、大きさが違ったりする。
けれど、そんな不揃いさのなかに、あたたかみがある。
カディも同じなのだと思う。

糸の太さや織りの表情には、わずかな違いがある。
でも、その違いこそが、人の手でつくられた証であり、機械では生み出せない魅力になっている。

手紡ぎ・手織りならではの、糸の揺らぎと豊かな表情。

今回の旅を通して、改めて感じたのは、カディは単なる素材ではなく、人々の歴史や暮らし、想いが織り込まれた存在だということ。

現地で見た景色や空気、そこに息づくものづくりの背景。
そこで知ったこと、感じたことが少しずつ今のものづくりへとつながり、27SSのメインアイテムとして登場する。
コルカタで見たものを思い返すと、目の前にある一枚のカディが、また少し違って見えてくる。

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